なれの果ての、その先に
」のレビュー

なれの果ての、その先に

沙野風結子/小山田あみ

この滑稽さ嫌いではない(笑)

ネタバレ
2023年8月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ 親からは死んだ兄の身代わりのような扱いを受け、男が好きであるという自分の嗜好を自分自身受け入れられず、妻とは2年で離婚、などなど、いろいろ背負いすぎで精神的に追い詰められている経産省官僚の基彬(受け)が、男娼のタスク(攻め)と偶然出会い、彼との関係に癒やされはまっていく話、って風に書くとほんとシリアスで、実際物語に流れている空気みたいなものはシリアスなんだが。。。本気のがっつりシリアス展開を期待している人にはあまりおすすめできないかもしれない。
だってこの話、なんというか、シリアスに見せかけて本気の本気でふざけにいってるんじゃないですかってくらい、ふざけてる(笑)そして私はこういうおふざけが嫌いではない。
官僚とか日本の改革とか、連続して起きている”事故”とか、男娼だの自衛隊だの私設戦闘部隊だの、もりもりに盛り込まれたシリアス風味の設定も深みはなくて、お飾りのよう。タスクは男娼だが、仕事でも最後まではすることはないという設定で、頑なにそれを守っているように見えていたのに、ある瞬間に割とあっさり基彬と一線を超えて恋人同士になったように見えて、作者様の他作品でも感じた、唐突に好きあってなんか唐突に一線超える感じ、もはやお家芸のように思えた。

そんでこれらもりもりの設定をすべて吹き飛ばす「双頭のアレ」。
え、二人殺されちゃうかもしんないんだよね、めっちゃ痛いんだよね、わかってるんだよ、わかってるんだけど、このシーン、想像したらめっちゃ滑稽じゃない?なんか笑えてくるんですけど?いや、痛いのは絶対嫌なんですよ、でもでも、沙野先生、ここは笑っていいシーンなんでしょうか、だって、どうしても深刻には読めないんですよ、シリアスにとらえられない私が変なんでしょうか?ってちょっと不安になってたら、作者様があとがきで「裏テーマは双頭のアレです」「モットーは真顔で変なことをする」であると書かれていて、なるほどまさに真顔で変なことしてる話だし、なんなら作者様の別作品も、まさに真顔で変なことしてる人たちが出てきてたな、なんて妙に安心?し、沙野先生をとても好きだと思った。

とにかくも、もりもりの設定をあまり深く考えたりせず、基彬とタスクの滑稽際立つふるまいをエロスとして楽しむための作品です。(金曜日の自衛隊カレー)
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