このレビューはネタバレを含みます▼
会社社長の藤堂(攻め)とその秘書伊織(受け)、二人は高校時代からの友人で、伊織はずっと藤堂に片思いしている(藤堂も自覚はないが実は伊織が好き)。伊織は藤堂のそばにいるため、藤堂への恋心をひた隠しにし、あくまで有能な仕事のパートナーとしてふるまう。友人への秘めた恋心、よくある設定なのに、読んでる間中二人のやり取りにずっとどきどきしてた。
伊織は自分の気持ちに気づかれないようずっと気を付けていたのに、あることがきっかけで藤堂と一線を越えてしまい、伊織のさらなる苦悩が始まるのだが、この辺の伊織の苦悩がなんかすごくよくて。苦悩してる描写は私はまどろっこしくて投げ出したくなることがあるのだが、本作での伊織の苦悩はじめじめさがなくむしろ興奮した。苦悩する伊織と、その苦悩に気づかず無神経な発言を繰り返し強引に迫る藤堂のやり取りがすごくよかった。一人になりたいと思っている伊織の気持ちも知らずにホテルで伊織を追いかけてきた藤堂とか、夜の予定を強引に入れようとする藤堂に拒絶する伊織とか、あーーたまらん。エロは描写自体は控えめな感じなのになんかすごくよかった。とにかくなんかすごくよかった、がいっぱいつまってた。
伊織も藤堂も仕事至上主義なところがあり、人間関係に対し時に非情で、結婚するのも仕事のためで、現実ではあまり関わりたくないタイプなのだが、フィクションでは私はこういう人間を面白く思ってしまって、まさに私のツボをついた受けと攻めだった。
伊織は藤堂をサポートする立場だけれど、決して藤堂に負けているわけではない。伊織自身が非常に優秀な点も私好み。受けと攻めには対等に戦ってほしいので、二人が本気で殴り合いのけんかをしてしまうとこもツボだった。
伊織がわざと勝負に負けてしまうとこもよい。勝負なんかせずに最初からついていくって言ってもいいのに、あえて勝負してそんでわざと負けるってどうなんですか。でも私はそういうまわりくどくて、でも仕事ができてドライなとこのある男前な伊織が好きだ。
ただ、中野がらみのエピソードや、終盤伊織が刺されてしまう展開は、非常に緊迫した話であるはずなのにあっさり流されているというか、あくまで藤堂と伊織の関係を動かすためにつけ加えられたように感じた話だった。
そういうとってつけた感のある話を差し引いても、私のツボをつきまくってくれてすごく好きな作品となった。