このレビューはネタバレを含みます▼
めちゃくちゃ好きです!一話はいわゆる「悪役令嬢モノ」を舞台にする作品…の、ヒロイン側へのメタが強いです。確かに封建制度の貴族社会で王家のみが強権を持っているというのはファンタジーですし、政略結婚はその必要性があるから図られるんですよね。幼少期からの婚約だったりしたらよっぽど背景が綿密に組まれているのは当然で、つまり乗り換えるにしてもせめて同派閥同家格じゃないとおかしい。格下貴族で「恋は平等!」なんて主張する貴族の特権に胡坐描いた女性では王族に嫁ぐのに不格。当然です。ズバッと突っ込み切り捨ててくれるから痛快&爽快です。
二話以降が本題、「冤罪悪役令嬢」を助けていく話。こちらも「物語の強制力でディティールが練られていないアレやソレに突っ込み修正していく」というテンプレをメタっていく感じですね。物語中でも「なんで今まで不思議に思わなかったんだろう?」ってメイドさんたちが思ってるシーンがありますが、そこは「テンプレ(物語の強制力)なので…」って感じ。1話の「政略結婚とは」「(領民から税を吸い上げ生きる)貴族とは」を下敷きに、テンプレの外の現実に取り残された裏切った側が完膚なきまでに叩きのめされる話です。
ミリアーナの実家没落パートも、父親の独白は物語の主人公も斯くや、といった純愛表現がされていますが、王との対面で脆くも崩れ去る感じが皮肉たっぷりでいいです。「どうしても君が欲しくて、幸せでいてほしかった」なんてどこの主人公の台詞?ですが、お美しい「純愛」の裏で領民を殺し、身を売らせた「領主(貴族)」としての現実に、結局何の覚悟もできていない。
それは元婚約者ユージーンも同様で、「貴族」としての責務を放棄した現実が待っているんですよね。やり手っぽい「貴族」然とした父親侯爵がさっくり切り捨てるのが大変良。
あとは…妹ライラのパートですねえ。楽しみです。(9巻時点)
それで肝心の、ミリアーナとフィリップの恋ですが、かわいくてめちゃくちゃ推せます!フィリップとのシーンでどんどんミリアーナがかわいくなっていくんですよ…本当に妖精だし髪飾りのやり取りのところがすごく好きです。「水色(俺の色)」のとこもすごくいい。
そして主人公の皇女様は…自分の価値を上げていくのは「自分の欲しいもの」を手に入れるためなのかな?国外に出されない程の力は既につけ、次は誰を夫にするのかの選択権…て感じでしょうか