鉄の女だと嫌われていたのに、冷徹公爵にループ前から溺愛されてたって本当ですか?~おまけに契約精霊が最強でした~
クレイン/白谷ゆう
このレビューはネタバレを含みます▼
序盤は面白かったです。冤罪で家族を殺された主人公の悲惨な境遇から立ち直るまでの話はめちゃくちゃ泣けました。そしてその後にヒロインは過去に死に戻るわけですが…そこからが問題でした。ヒロインが何かをする前に家族は救われており、その結果、何故かヒロインは恋愛脳になってしまって、家族を守るとかそっちのけでヒーローを追いかけるだけの女に成り下がってしまったからです。なんで今回は家族が犯罪に巻き込まれなかったのか、普通ならそのことを不可解に思って調べるだろうし、自分以外に前の記憶がある人間の存在を疑うはず。あまりにも酷い死に方をした家族にヒロインは深く悲しんでいたのだから、今回家族が助かったことも、その見知らぬ誰かの善意を信じるよりも、家族がまた嵌められてより大きな悪意に利用される可能性を考えるのが普通ではないでしょうか?つまり、自分で一切解決してないんだから、本当に家族は助かったのか安心できないのが当たり前では?って思うのですが…しかしヒロインは家族が助かったことを何故か疑問に思わず、だから特に何もしないし、あれだけ愛していた家族の心配もせず、今回は平民落ちしなかったからヒーローの嫁になれる!としか考えません。序盤が本当に悲惨で亡くした家族を想う主人公があまりにも可哀想だったからこそ余計に、家族のことはどうでもええんか!?って思いました。これによりヒロインは実質キャラ変しちゃった感じで、序盤の落ち着いた様子が好きだったので残念でした。そしてなにより、全体的にストーリーが薄っぺらかったのがマイナス。ただこれに関しては間違いなく尺の問題です。死に戻る前っていう前座の話が3割、本編4割、ヒーロー視点でヒロインと同じ話の繰り返しが3割という、実質ちゃんと物語が動いてる部分が全体の4割程度しかないという、超短編な作品なわけですね。その少ないページ数に、本来ならその3倍くらいの長編になるはずの話を詰め込んでる感じなんです。そりゃ薄っぺらくもなる。クレインさんの作品は8割くらい読んでますが、私が読んだ中ではこの作品が一番、ストーリーが浅かった印象。とはいえ、つまらないわけでは全くありませんでした。壮大な設定、壮大な始まり、盛り上がる序盤…からの、失速で、期待が大きかっただけに失望も大きかった…という感じ。それでも綺麗に纏まった話ではあるので、軽く読むには十分だと思います。
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