親愛なるジーンへ 2(特装版)
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親愛なるジーンへ 2(特装版)

吾妻香夜

BLを飛び越えた、これは映画です。

2023年9月5日
発売日に読了した際は、良い話だったけどちょっと思ってたのと違う。と肩透かしを食らった気持ちにもなりました。オズとテオのようなド直球のストーリー展開を期待していたからだと思います。が、今日、久しぶりに、何の先入観もなく冷静な気持ちで再読したら、驚くほどに泣けて泣けて堪りませんでした。何というか、トレヴァーとジーンの個人的な物語を余りにも飛び越えていました。何者かに成れると信じていた若者の葛藤、時代のしがらみ、包み込む愛、家族の絆。それぞれの人生を、苦悩を抱えながらも懸命に生きるたくさんの登場人物を包括した、1本の川のような壮大な物語だったんですね。紡がれるお話が普遍的で、あなたの物語でありながらも、私の物語であるというか。いちいち心の琴線に触れてきます。加えて、トレヴァーとジーンのお互いを想うが故の心の葛藤が、言葉に表情にどうしようもなく溢れていて、胸を打たれて立ちすくんでしまう。ひたすらに泣きながらページをめくる手が止まりませんでした。星5つでは足りない大傑作です。ラムスプリンガの時も思いましたが、まさに映画を見た後の気持ちなんですよね、今。吾妻先生の才能に震えます。素晴らしい作品をありがとうございました。
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