OZ 完全収録版
」のレビュー

OZ 完全収録版

樹なつみ

臆病なライオンはブリキ「人間」によって

ネタバレ
2023年9月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ マッドサイエンティストというのは、魔法使いと似たようなものなのは、感覚的に理解できる。
作ったものの手によって自らを危うくするのも王道。しかし、その張り巡らされた何重もの新たな敵の出現は、それ一体何枚剥くことになるのかなと、息切れしそうだった。この重層が特徴づけとはいえ。。。

さて、ネイトは結局は冷血ではなかったのか!?

冒頭の主人公フィリシアのいかにも危なっかしげな暴走傾向の女の子が、読んでいて面倒臭さ全開。博士を、頭でっかちの、人に不馴れ人間に作りこんでいてーー。時を経て成長したのは心底ホッとした。

SF展開で、ハードなアクション、殺し合いも爆発もある。きれい事じゃない。軍も傭兵も、本番の闘いあっての身近な危険だ。人(人造人間も)の死が幾度も描かれる。私は、少年・男性向け漫画での暴力全開なバトルシーンは全く好まないが、少女漫画のいかにもな設定の中では一種の要素として作風如何で受け入れられる。

しかし、少女漫画の中でこうした種のものをやってくれて、改めてありがとう。さすが当時クオリティ高い作品が詰まっていた雑誌LaLaよ本当に有難うです。連載当時リアルタイムで読んではいないけれど、LaLaがあったから、この作品は自由に羽ばたけたように思う。
終盤近づいてのいきなりのダントリー博士、そして、助っ人無しには果たせなかった最後のこと、いろいろご都合よく出来ているのだが、そこを白けさせないで読ませるのはお力があるから。

それにしてもあぁ19はあのあと何処へ?気がかり。

メキシコは、行ってみたかった国。遺跡のほうは核戦争後世界のために描かれず仕舞だったが、胸躍るところではあった。
エプスタイン家絡み過ぎ感から随分と4星と悩んだが、素材の面白さ、妥協ない「悪」の存在や戦闘シーンなど、締まりよく最後まで飽きさせず読み進めること出来たので5星で。それに、声紋がずっと効いたこともお見事と感じ入ったので。
(尚レビュータイトルは3巻に収録のプロットメモに基づいて私が追加的に感じたことを。人間になった彼の振る舞いが、陰のヒロイン…)
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