70年代央に女性職業舞踊家の自立を説く





二部構成。
プロになるかどうかも将来定まらない主人公が、大化けする芽を見込まれて、バレエが好きという自分の変わらぬ気持ちに、途中で降りることになった仲間の気持ちも乗せて、自分の地歩を固めながら羽ばたく第一部。
一定の評価を得ながらも、バレエ団員にはまだ年齢が届かない。師は次の教え子を見つけるわ、その師の力によって磨いてきた自分には、その師に対するあてどない恋心の宙ぶらりん故に自分には何もないと感じるわで、苦悩も深い第二部。
何処が素晴らしいか、と問われれば、全て素晴らしい。
環境、社会、制度、バレエ知識、ポーズの美しさを構成する手の向き足の向き顔の向き身体の方向。
新作に取り組む大バレエ団と、その新作スタートに埋め込まれた主人公ノンナの頑張り。根性物語のようでいて、スター誕生物語秘話のようでいて、しかし、バレエ芸術に対する視点の、当時のバレエ漫画に無かった革新性。また、恋する気持ちや発達途上の職業意識のナイーブな描写。
師への尽きない恋慕との葛藤、バレエの役柄への理解に対する試行錯誤など、中途半端な年齢と状況とから、なかなかひとつの解の無い中を模索し続けるさま。そこが素晴らしい表現力で彼女の苦しみを織り込んで追いかける為に、終盤近くのとりわけ圧巻のコンクールシーンで結実するシーン他は感動的。多くの漫画に影響を与えた場面。ここを読む度に、この作品の深み、バレエ芸術の美を感じてしまう。漫画に於けるダイナミックとは、これなのではないだろうか。
ミロノフ先生も要所要所でニクイ。
バレエ漫画といったらこれ一本しか私は長年認められなかったくらい、見事に完成された作品。
山岸凉子先生の作品群を振り返ると、きらめく第一歩を踏み出したかのような、その後の少女漫画界での活躍を約束されたような、それこそ後年巨匠になるのを予感させる初期の逸品。
強調する。名実共に不朽の名作。

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gao さん
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