君知るや
」のレビュー

君知るや

石原理

「もう駄目です。落ちてから四十五分経ち…

ネタバレ
2023年9月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 本人達には人生の真剣道場。青春臭さは、汗の臭さ? 道を進むことの厳しさよ。弟達に思春期の悩みを背負わせて、兄貴達は超然としているようでいて、実は彼らも南国の風に心を委ね倦ねてどうしたらいいか答えに迷っていたのだよ。
なんていう感じの、これは渾身のギャグを見せつけられているのかと、邪推もしたくなる。本当に堅苦しい言葉が雰囲気作りに貢献し、太陽に向かって青臭い台詞の小っ恥ずかしさを全肯定の、力強い、「走れ!!青春」的な骨太?BL。いや、苦笑も時折入り込む笑いの、スカッとBL!?

ここまで徹底されると、臨時なのに気のいい(ちゃっかり)付き添いのクマさんがかわいらしい。遠野の聞き取り調査エピを挟む小技の巧みさ。作者の幅に恐れ入る。
師範達も、おかわいらしい。

あれこれ細かいところにもお茶目な面白さが潜んでいるのに、揺るぎない主軸を物語が支えて、開始から完結まで長丁場だったらしいのに、構成しっかり。剣道の試合や道場の稽古風景、学校のこと、試合の為の移動、合宿等々硬軟交えてギッシリなのに散漫感無しなのも驚嘆しかない。
もっとも、時間の間隔が、絵柄を変遷させたのは少し残念だった。

私のほうからは、星は文句なく満点。
天の川を仰ぎ見る場面が私にはとても良かった。実際、天の川をかつて島嶼で眺めたとき、ミルクを流したようなという表現がピッタリの川を見つめた感動が自分にもあったから、通じるなにかがある。その光景を見たときの、言い知れぬロマンチックな気分、それを見ての場面は、大コマでありながら(だからこそ?)、いい空間を表していた数頁と思う。

追記) 魚屋さん、月島。昔ながらの商店と進出著しいマンションの舞台設定の対照がまた味わいを深めてる。
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