気難しい王子に捧げる寓話
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気難しい王子に捧げる寓話

小中大豆/笠井あゆみ

星5では足りない

ネタバレ
2023年10月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 歯車が噛み合うように進んでいく物語で、王子様の目覚め、腹黒いオズワルドの焦燥を楽しんでいる内に物語にのめり込み、一冊に込められた2人の全てに胸を打たれました。
最初と最後の2人の対比には言葉が出ない。永遠という御伽話を叶えてくれたのは極上の愛憎と執着と、真実の愛!!
ストーリー性はもちろん、人物描写も素晴らしい。
鏡に映された真実を知った後、ことの重大さに打ちひしがれ傷心するエセル。陰謀渦巻く宮殿において、バカ王子ことエセルはナイーブで無知。ただ、自分を過信しない賢さを備えていて、自分の立場を理解し他人を頼ることができた。ここからエセルの目が覚めるわけですが、中身は変わらないのが良いんですよね。
誰かを守りたいという気持ちが自分を弱くすると嘆くエセルに、守る物が強くするんだと即答するオズワルドでしたが、エセルの感情こそ強みだと肯定されたこの場面が好きです。プライドをバキバキに折られたエセル殿下が守りたい存在のためにどんどん頼もしくなり人々を惹きつけ束ねていく成長を見守るのが楽しかったです。
そんなエセルに執着するオズワルドは難儀な男。同じ穴の狢だと思っていた相手がどんどん昇っていくのを見て、エセルに影響を及ぼしたい、爪痕を残したい、一瞬で終わらせたくないと焦がれていく様がめちゃくちゃ良い。エセルを丸ごと愛して欲するオズワルドの執念はこれこそが執着攻めだと納得しました。展開が美味しくてページ捲るのが止まらないし、終わり方も粋。気難しい王子に捧げる寓話というタイトルが光ります。
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