トランスジェンダーの原理
」のレビュー

トランスジェンダーの原理

神名龍子

社会と対立しない生き方

ネタバレ
2023年11月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ 私がこの方を知ったのは「LGBT理解増進法」が成立(2023年6月23日)し、トランスジェンダー経産省職員へのトイレ使用制限の訴訟で最高裁判所が違憲判決を言い渡した(同年7月11日)頃でした。ご自身がトランスジェンダーでありながら独自な発言をされていてどんな方なのかとても気になりました。
この本は「女性」だという自覚を持ち悩み、自分自身を考えるため哲学を学び始めたこと、開設したホームページに考察を書きためトランスジェンダーのネットグループを作ったこと、性同一性障害の当事者グループの誘いで「性同一性障害の戸籍上の性別変更を認める特例法」を推進する運動に参加したこと、性的少数者の今後についてなどが書かれています。特例法は2003年7月10日に成立しました。現在は性別適合手術など5つの要件を満たすと性別の変更ができます。マイノリティの権利を推進する活動に加わった経歴をお持ちですが、マイノリティを「弱者」と位置づけ一方的な被害者とする、そのような手口に違和感を感じ、ときには怒りすら感じてきたと書かれていて性的少数者の特権化を否定しています。筆者は高校を卒業して25歳まで警察官でした。抑制の効いた理知的な文章で自らを悲劇的なものとしない強さを感じます。こういう考えのトランスジェンダーの方の本は貴重だと思います。
筆者のXを見ると「自身もセクシャルマイノリティですが、ラウドマイノリティの欺瞞は暴きます!」とありました。性別適合手術の要件につき違憲判決を下さないよう求める団体のポストがリポストされていました。10月25日に最高裁判所で生殖不能の手術要件は違憲と判断されました。手術要件全撤廃へと急激に近づいているように感じます。この本が出版されてから色々なことが起きました。今一度このことについて書いていただければと思います。
2022年1月 総181ページ
いいねしたユーザ9人
レビューをシェアしよう!