娘がいじめをしていました【分冊版】
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娘がいじめをしていました【分冊版】

しろやぎ秋吾

泣きました。久しぶりに漫画で

ネタバレ
2023年11月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 間違いなくハッピーエンドとは言えない結末でしょう。
しかし、それぞれの家族は娘のやったこと、やられたことから目を背けなかった。
親は子を選べず、子も親を選べない。
そんな言葉があるのは、親子が結局人生の人間関係で一番濃いものであるからです。
友達も、仲間も、知り合いも、選べないようで選べる。
苦しくても、幸せでも、関係無く死ぬまで途切れない親子の繋がりは自分の命の延長線です。
子供も、親も、辛かったでしょう。けれど、親が子を見放すことも、子が親の苦悩を認識しないことも、自分を傷つけることと同義です。
それが良い悪いとかではなく、それぞれの心に死ぬまで深い傷が残ります。
本作の結末の後も、おそらく彼らは傷を抱えることになりますが、それ以上に大切なこと、大切な関係に気づけたのではないでしょうか。ある意味、なかったことにはならないからこそ本質的なハッピーエンドなのかもしれません。
私はもう大人です。
何をしても、何に悩んでも、もう自分の事のように考えてくれる人はいない。
その事実に寂しくなって出た涙なのか
苦しみを共に背負うことを決意した家族に感動して零れたものなのか
私には分かりません。

両家全員にとって間違いなく、善悪の判断抜きに価値のある経験であったと思います。
いじめでなくたって、人は生きているだけでいつだって他の誰かを傷つける危険を孕んでいる。認識できるものだけが全てじゃない。その前提は人類共通のものであって、家族ももちろん例外でないと理解することはとても難しいことです。

傑作。
筆者にはどの意図があってこの作品を完成させたのか気になりますが、1を聞いて10を知れる作品とはまさにこのような作品のこと。単純ないじめ解決ストーリーではありません。
いい意味で、胸糞作品、なんて言ったりもしますが、所詮人生なんて全て知れば胸糞極まりないことだらけだと思うので、むしろ現実味のある良作と呼ばれるべきだと思います。
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