ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス
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ハコヅメ~交番女子の逆襲~ 別章 アンボックス

泰三子

生きる選択肢はいろいろあり。星7感の作品

2023年11月9日
番外編は本編の人気に依存することが多くて小粒化が普通。この「別章」は特別に強い生命力を持った変異株のように立派に成り立っている。
他のレビューアーさん達のお言葉に従い本編17巻の後、こちらを読んだ。この読み応え、本編のほうはおちゃらけたムードを?使って、まず笑わせることが最終目標のようで、重さを躱して意識的に強めている陽の要素で面白さを追求、こっちの別章は趣向が異なり、ひとこまも笑いに逃げることなく、警察官という職に就いている人達の頑張りが伝わる。昼夜分かたず、寸暇など皆無で、日々身を粉にする驚くべき職務遂行への献身的姿勢。
また、一言で正義と言っても、社会の中では振りかざされた軽佻浮薄な正義が事件関係者を苦しめる構図も、罪作りな批判的感情が解決を遅らせる現実も、肌感覚ヒリつくかの様に描写されていた。

職業選択時の動機は、人はそれまで生きてきた経過を経て様々。しかし、苦しみもやり甲斐も、実に振り幅の大きい尊い職業人生であろうことが、この漫画が淡々と表すドラマ性を通して、読み手のこちらに沢山の示唆を与えてくれてる。
刑事ドラマなどでひらめきや華麗なアクションで魅了する刑事の活躍ばかりみていては気づかぬ、沢山のこぼれ話にこそ、大きくて深い人間ドラマがあることをこの漫画は、たった1巻で気づかせてくれる。そして、犯罪被害者、犯罪を犯した者の背景を、これ程丁寧に掬い取って、唸ってしまうほど、罪とは、人間とは、などいろいろな見方を与えてくれる。
そして、本編にも連なることだが、その職を続けるという意味や、生死に関わらず離脱するという状況や選択の事情も描かれ、こういう切り取り方をされた作品が今までありそうでなかったような気がしてきて、読み応え大。

ホントにずいぶんすごい力を持った漫画家だと感じる。

(私は丁度200件目に当たるレビューを挙げた訳ですね。)
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