光と影の王
」のレビュー

光と影の王

水壬楓子/北沢きょう

よく練られた骨太のファンタジー

ネタバレ
2023年12月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ キャラクターの行動の理由となる愛情や信念、若さへの羨望と焦燥、権力への欲望と野心…。様々なキャラクターたちの思惑と個性が無理なく動いて壮大なストーリーを紡ぎ出す、満足度の高い作品でした。
最後に2人が身を落ち着けた先だけは、何となく違和感を感じましたが、それすら折り込み済みの話運びだったので、読後感はすっきりしています。おそらく2人のいちゃいちゃ込みの後日談をもっと読めれば更に満足&納得するはず…。ぜひ追加の後日談お待ちしています。
リシャールが1人で決断し、行動してきたことは壮絶の一言ですが、その意図に気づくとものすごく辛いです。救いなのは、アーサーが常に正しくリシャールの意図を読み解こうと苦しんでいたこと。リシャールの思惑に乗って、リシャールを憎むような愚鈍な皇子ではないので、不穏ながらも安心して読み続けることができました。王になったアーサーに、評価を地に堕としたリシャールが寄り添うことは不可能。むしろ悪政の象徴となったリシャールが死ぬことで、アーサーの王としての立場を確固たるものにしようとするその覚悟に、リシャールの男前さとアーサーへの愛を痛く感じました。それを理解した上でアーサーが下した決断は、ある意味リシャールを裏切るものではありましたが、清々しい結末で、読後感は良かったです。
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