アフターメルヘン
」のレビュー

アフターメルヘン

田島生野

おとぎ話は残酷である。

ネタバレ
2024年1月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ そも。グリム童話を編纂したグリム兄弟は、各地の伝承を書き記しただけなので。不思議な事とぼんやり終わったり、ちょっと子供達には聞かせられない残酷さがあったりする。アフターメルヘンと言わずとも。はなから残酷なのだ。メルヘンがハッピーエンドなのは、ディズニーなど後世のハピエン厨が創作したものだ。ディズニーで育った若い人が「ラプンツェル」がそんな残酷な話だとは知らなかったと驚いていた。作者が意図したことか否か。完全無欠のハピエンの筈の「シンデレラ」を「青髭」ばりのサイコ風味にしてみたり。結構残酷な物語の「ラプンツェル」に慈悲を垂れてみたり。そんなアイロニカルなオチも何だかくすぐられる。私もずっとそう思っていたのだ。あんなに大切に育てられたのに、男と通じて塔から逃げ出し、音信不通。なんて不義理な娘だろうと。この物語は一つの可能性を示してくれる。「いばら姫」(「眠り姫」とも言う)の100年の眠りだって。100年後に目覚めさせられる理不尽さよ。世にもメジャーなグリム童話だけでは飽き足らず。作者はペローやアンデルセンにも言及する様子なので、これは大いに期待したい。
私としては。思い出しても涙してしまうオスカーワイルドの「幸福な王子」にも幸せなアフターメルヘンをお願いしたい。
いいねしたユーザ13人
レビューをシェアしよう!