アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」
」のレビュー

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」

中川裕/野田サトル

本書を読む機会がこうしてあって良かった!

2024年1月18日
「ゴールデンカムイ」に出会えたから本書を手に取った。あの漫画には物凄い力があり、フィクションなのに地域包括的な類似点や個別の相違点もノンフィクションのようにクッキリ描く一方、現代の自分にとって時空を一気にギュッと纏め込んで同じ空間に飛んでいって居合わせさせるかのような力技でサバイバル生活、埋蔵金に賭ける執念の背景などが入り乱れる圧巻の作品だった。
「日本」史という多数派サイドの視点での歴史の中に翻弄される危機存亡、アイヌの方々が民としてどんな趨勢を辿ったかを知る現代の私たちの前に、独自の文化を豊かな情報量で描写してくれた。伝えようという発信よりも見せてくれる、中に入った感じに思わせてくれる、漫画ならではの描写で、小手先の表面的な浅い触れようではなく、籠められている個々の素材、風習や考え方などの、巧みな総合的な展開があった。
あれほどの作品に、作品内にもクレジットされた取材協力、タッグが見事なのだろうとは思っていた。

大学時代から社会人若手迄の間に、8分の1アイヌの血が流れていると言ってた男の子とたまに会った。男女の縁にはならなかったが彼の言葉は強い印象を残した。三代遡るならば時代が近づくはず。
程なくして会社同期女性と北海道旅行したとき、法改正前後の彼等とポジションについて話そうとしたら価値観は正反対だった。この問題は、近しさを覚えないと同じ空間に居ながら無関心で終わってしまうらしい。
ラグビーワールドカップを見ると、過去は消せないが今は学ぶことがある、と思う。少しでもなにかしら採り入れられればもっと良いかも。
第二章は胸が痛くてやまなかった。今の自分たちはどうしようもないことだけれど、何も出来ない事もまた苦しい。
何処の地域にもあることなのだから歴史のひとこま、と割り切るのも難しい。
ヒンナとは感謝の言葉とか。
使命感に燃えて彼らの言語を学ぶ人が数年前に現れてなんだか光を感じたことがある。
日本人は、南からと北からと流れ住み着いた混血だと考えると、狭い島国内グローバル化で消えかかるものを見つめさせてくれている本書は、素晴らしいなんてひと言では済ませられない、頁数多くなくても大きくて認識を深められる重大な副読本。
ゴールデンカムイで啓発されたら次は此を読むべきだと思う。
尚、「註」をタップして出典元を見に行くと戻れなくなるのは読書上困る。
映画は映画で面白かった。
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!