チーキーモンキー
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チーキーモンキー

斧原ヨーコ

まるで文学作品を読んでいるよう

ネタバレ
2024年1月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ ノンケの2人がどうやって結ばれるのか、過程がすごく丁寧に描写されて、商業BL作品というより文学味を感じる作品です。
時系列が前後するエピソードをあえて差し込んだりすることにより、今の状況により感情移入できるような仕掛けなど、ストーリー以外の構成や演出などでも作者の才能が圧倒的でした。

それぞれの彼女との関わり方を通して、お互いを知る中で、段々と意識していく構図に新鮮さを感じましたが、同時にリアルな生々しさも感じます。ノンケ同士の恋愛を描く際、ハマっていく過程を表現するのが難しく、シチュエーション萌えだけで書いている表現力のない作家さんはストーリーやキャラクター心理に違和感を感じるような、下手なご都合主義に逃げがちだと思うのですが、この作家さんは構成が上手く、また先輩のキャラクターが、ノンケの後輩がどんどん惹かれてしまうのを十分納得させるほど魅力的なので、(ある程度ドラマチックな展開はありますが、)強引なご都合主義的な展開はなく、あくまで日常の中の関わりの中できっかけを用意しキャラの心情を細かく表現しています。そのためノンケの後輩くんの心情の移り変わりも自然で、読者も置いていかれず、2人の関係の進展についていくことができると思います。
ただ、過度にデフォルメされてない乾いたあっさりとした絵柄や、読者に媚びたような下品なわかりやすい暗喩や表現をしていないので、文学的感度の低い読者は理解力が足りず置いてけぼりになると思います。しかし、万人ウケを狙わずあくまで作品としてのクオリティこだわった強気な表現が、ストーリー自体ともとても合っていてすごく好感が持てました。下手くそな商業BLが寒く感じる、感性の鋭い方におすすめです。作者の才能に脱帽です。
残念だったのが、表紙の煽りです。読まずにあらすじだけサラッと見てから読むのがおすすめです。
人気の属性や売れる形式に当てはめようと無理して煽り文句を決めた感があり、興醒めしてしまいます。
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