キミがいなくなった冬の海【単行本版】
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キミがいなくなった冬の海【単行本版】

斎藤屑

冬の海で、何度も出会う

ネタバレ
2024年2月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校で一度だけ接点を持ったまま、2年ぶりに再開したリーマンの柊と大学生の瀬波。その後、1年同居していた二人の、友達以上の曖昧な関係が、事故で瀬波が1年分の記憶を失くした事でリセットされます。曖昧にさせていた関係をはっきりさせる事なく、瀬波は忘れて、柊は無かったことにしようとしました。その二人が再生していく物語。ターニングポイントにはいつも穏やかな海が存り、ずっとローテンションで静かに進みます。柊も瀬波も静かなタイプで、どちらも毒親の影響を強く受けてます。親からお金だけは十分に振り込まれ、一人マンションで暮らす瀬波と、母親の言葉で人生を縮こませている柊。似たもの同士なんですが、柊がヘタレ攻めで…。ヘタレと言っては可哀想か、母親の呪言のせいで、人生諦めちゃってる真面目な子。確かにある相手への感情を、柊のためだと無かったことにしようとします。でも、愛情がなくなるわけはなく。柊も瀬波も、誰かに救われたいと言うより自分で耐えようとするところが似ていて、それぞれが一人でいた時間に、他の誰かの影は有りません。なので、二人が一緒にいる姿は、共依存ではなく、寄り添っている、と書きます。拗れてしまった感情が、お互いへの愛情でほぐれていくさまは、ホッとしました。穏やかです。エチもあります。二人にとって大切な、凪いでる海のように、ずっと一緒に幸せでいてほしいなぁと願わずにいられないカップルでした。
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