利息は甘いくちづけで
」のレビュー

利息は甘いくちづけで

いおかいつき/國沢智

テンポよく楽しい、受けが魅力的

ネタバレ
2024年2月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ あとがきによると、プラチナ文庫から出されていたデビュー作に、同人誌に収録していた短編も加えて新装版として出されたものとのこと。登場人物全員関西弁で、全編にわたりテンポよく小気味のよいやり取りが繰り広げられた。ストーリーとしてはいまひとつぐっとこないというか起伏に乏しいし、攻めと受けの気持ちの変化みたいなものが唐突なような気がしたけれど、一人で闇金業を営む受けの綾木のキャラが非常に魅力的だった。
脇役の藤井とか、ちょいちょい出てくる綾木の客たちもいい味出してたと思う。
綾木は金儲けが大好きで、損得勘定ばかりしてるようなやつ、そして彼なりの流儀みたいものがあって、おごってもらうなら、高級寿司ではなくお気に入りの回転寿司だったりする。これだけでも私好み。最初に綾木がヤクザの根津(攻め)に殴られ襲われたときは、無理やりやられたのに快楽に流されいつの間にか好きになっちゃうBL王道展開なのかと思ったけど、いい意味で予想と違った。最初のときの綾木の(無駄なダメージ受けたくないから)「傷薬使ってくれ」のセリフでさらに綾木が好きになった。いやーやめろーとか言わずに、「そんなでかいもんいきなり挿れられたらスプラッタになるわ」なんて言える受け、すてき。しかも自分を襲ったことをネタに根津を脅し、いいように使い始める始末。根津のほうは一瞬で綾木にベタ惚れした感じで、好意を隠すこともなく、無骨な性格ながら、綾木に使われることをむしろ喜んでおり、この二人のやり取りがとても楽しかった。綾木はちょいちょい私の意表をつくセリフを言ってくれるというか、変に恥ずかしがったりもじもじしたりせず、いい人ではないけれど見ていて気持ちのいい人。闇金とやくざなんていう設定だが暗さや重さはなく、適度にはさみこまれる濡れ場も潔い感じで、「気持ちいいからありだな」な受けの、じめじめうじうじ悩んだりしない点もよかった。とにかくキャラがよい作品だった。
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