夏目友人帳
」のレビュー

夏目友人帳

緑川ゆき

半分は優しさでつくられている

ネタバレ
2024年3月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ と、声優の石田彰さんが仰っていた言葉が、今でも強く頭に残っているんですけど、作者様の優しい眼差しが作品全体から感じられるような素敵なお話です。
生まれながらにして、異形のもの 妖の姿が見えてしまうことで、周りに受け入れられることなく厳しい環境で育ってきた主人公夏目。
自分と同じ体質だったという祖母、レイコさんの遺品である友人帳をきっかけに、レイコさんと自分にしか分からない孤独な気持ち、また、今までその原因でしかなかった妖との交流をしていくうちに、妖の気持ちも分かるように。傷つき、悲しい想いを経験した夏目だからこその優しさの持ちようは、度々お人好しと言われてしまうのですが、そう言った者たちの心をほぐしていくんですよね。
なんか、読んでいると良心が報われたような気持ちになります。
レイコさんはどこまでも孤独で人と交われず、かといって妖と交わってしまったら、ますます人として生きられないと思ったのでしょうか。他に自分と同じ人にも会えずに生き方が他になかったのかもしれません。強い人だからこそ、独りでいれてしまったこともありかもしれない。切ないレイコさんの話は今も謎を孕んで、物語の伏線になっていて読者を飽きさせません。
あたたかい絵と語る核心的な言葉は少なく、こちらに委ねられるように展開するストーリー。特に、毎回はっきり答えを言葉にせずに余韻を残して終わるラストは個人的にとても好きです。
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