ギョウケン
」のレビュー

ギョウケン

桂馬びんぞこ

心に刺さる

ネタバレ
2024年3月29日
このレビューはネタバレを含みます▼ どん底の者たちが傷を舐め合うように惹かれあい、その日々の汚泥の中を深くさらっていくと輝く宝石が隠されていたような、そんな物語。

どうにもならない世界の中で足掻く人々の話が好きだというのもありますが、心に深く刺さりました。
20代にしてすでに達観したような人生を送っていたアケビ。そこに飛び込んできたイカレた男を拾って利用しようとして、結局絡め取られてしまう…でもそれは「愛する」って気持ちじゃないのかね。言葉が不器用な男と気持ちが不器用な男の純愛話と思って私は読みました。

タイトルの「聱(ギョウ・漢字変換されない)」は調べたら“難しくてよくわからない言葉”という意味合いが出てきました。
心情セリフも最小限、過去の話も本人たちがポツポツ語る以上のものは出てこない。こちらであれこれ想像する余白が大きいです。
結末はメリバでもハピエンでもなく、彼らだけの世界に逃げるでもなく、しぶとく生き残るのだろうなという本編ラストのセリフがとても好き。
ボーナストラックのお子様ランチにやられたのはアケビや私だけじゃないはず…!
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