人間倶楽部
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人間倶楽部

寺館和子

なんと言ったらいいのか判らない。凄い作品

2024年4月5日
一体何を見せてくれたのか。人間の腹黒さ?暗さ?哀しみ?エゴ?支配欲?性欲に突き動かされる品性を持たない獣性?…。ダークなBL?、マフィア・ギャング物?。
それとも、純粋になれない人間達の愚かしさ? 過酷な運命に弄ばれた悲劇?
毒物やマ薬に負けない身体、強靱な体力も知識も備えて世界を股に駆け回る。不死身に近いキャラ達が、暗黒社会で強かに生き抜く姿。読んでいて、現実感そっちのけで、妙にその暴力や血生臭さの中にポエムを創る強引さが、強烈に個性を感じさせる話。レディコミとハードボイルドが入り混じったような濃い絵で、執着と追跡が繰り広げられる。
主人公忍の存在そのものも、荒唐無稽といってしまえばそれまでなのだが、力技に負けて読み手ががっつり彼を肯定すれば物語の進行への好奇心が刺激される。もっとも、私は龍(ロン)という力強く忍を支えるサポート力の大きさに何度も、この話のキーパーソン龍の無茶な造形ぶりこそ作品のベースのひとつであると感じていた。

楽しい話ではない。裏側の汚くて見たくないものを見せつけられたイメージなのだが、その暗黒の中であだ花?、一見清楚な花を巡る戦いがある。権力闘争も描かれる。

現在の既刊全11巻読了したが、作品紹介に現時点で完結の文字はなかった。しかし最近発表されたわけでもないから、これにて落着なのか。
しかし、9巻の一部と11巻最後に重複有るため、再編の余地も期待している。

作者寺館和子先生についてはハーレクインコミック「ばらとシャンペン」にて初めて知った。その実力を感じていたからこそ、シーモア(島)で本作に辿り着いたとき迷わず試し読みに行き、すぐに買い進めた。
エネルギーとか勢いとか、何が推進力となったのか、描いた寺館先生の強い意志を思ってしまう。世界を股に掛けながら、実は狭くて濃い人間模様の彼等の末路まで、最期までを知りたいと思うのは、読み手のエゴとばかりは言えないだろう。寺館先生にも描き尽くす欲求はないのか?何度死にかけても生きていた彼等の、みんな結局どう生きたの?死んだの?、という問いに、こたえて欲しいとは思う。
一巻当り平均373.5頁とどの巻も頁数多めで、価格比お得感有り。4と相当迷ったが、なんともいえない世界観をこれだけ堂々繰り広げた功績を評して5星にした。
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