フールナイト
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フールナイト

安田佳澄

貧困と選択と希望

ネタバレ
2024年4月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 厚い雲に覆われ光がなく植物が枯れ果てた世界で、酸素不足が死活問題となる。人類は技術を集結し人を「転花」させることで植物を、酸素を得ることを選んで数年。倫理的に余命僅かな人間が希望した場合、転花の申請をすることができ、2年の年月で完全に植物となり意思を失うことと引き換えに1000万を手にすることが出来る――
薄暗い未来をSF的に描いているけど宗教や貧困が生む悲劇の解像度が高い。すごく現実的。
転花院職員の女性と小学生時代に同級生だった男性が転花希望として転花院で再会するところから物語が展開していく。2人の生い立ちや、登場人物の背景が濃く、皆何かを守るために足掻いていて、それが魅力的。転花院、一般市民、反対派、開発者、それぞれの思惑が絡み役所だけの話ではなくなってから手に汗握る展開で気づいたら一気読みしてた。
転花した人間とその家族の抱える思いも様々で、倫理的にも考えさせられる良い作品に出逢えたと思います。
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