ある日、無口な婚約者の感情が分かるようになりました
路永和木/瀬尾優梨/泉乃せん
このレビューはネタバレを含みます▼
無口な婚約者の胸に差されたスミレの花。
それは。オシャレで身に付けている物では無かった。
その花は、アーシェにしか見えない幻の花。
無口で無表情の伯爵の感情によって蕾はほころび、咲き、萎れたり、膨らんだり。増えたりもする不思議。
アーシェと心を通わせる内に、花よりも雄弁に表情が物語って行く。互いの感情が物語る温かなお話。
それは花の女神の気まぐれの祝福とも言われ、いつかは消滅してしまう。結末も予め示唆されている。アーシェにその花が見えなくなったその時。
2人の幸せが盤石になり、成就されている事だろう。それは物語の完結でもあるので、今から少し寂しい気持ちもするのだけど。今はただその幸せまで見届けたい。
ところで。長年伯爵を苦しめて来た、父伯爵や兄には盛大なザマァ(例えば家の没落とか)をご用意して頂きたい。
ベルンは騎士として立身出世出来そうなので、実家が没落しても大丈夫な筈。自分の力で叙爵出来ると思うし。
望まない関係を強いられていたベルンの亡き母が住んでいた、今は育ててくれた祖父のいる村も、父伯爵の力の及ば無いところで静かに暮らせる様になっていて欲しい。
心の声が聴こえる系の物語は沢山あるけども、可憐な花が代弁するなんて。とても可愛くて温かいです。
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