きみが終着駅
」のレビュー

きみが終着駅

ロッキー

描いてある全てを分からなくてもいいと思う

ネタバレ
2024年5月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ この作家さんの作品を読むのは3作目ですが、とても行間を読むような話の作り方で、難しいといったレビューの訳が分かった気がしました。
ひとつ残らず言葉にされてるわけではなく、本当に心のなかで呟いたものをそのまま聞いてるようなモノローグが、逆に魅力的であり、知りたくなるような気持ちにさせます。また読み返して、その時の自分でふと気付くというのもいいのかもしれません。
話は、他の人と同じように普通に過ごしたいと思う2人は、一方はゲイであることを隠し、一方は家族間の確執を経験して感情的になることを封印するように暮らしていましたが、それは逆にいうと普通に暮らせなくなっているわけです。反動で何事にも敏感に反応するようになってしまったゲイの彼に、自分にはないもの、そしてどう変わっていくのか知りたくなる、近付いてみたいと、初めて他人に興味を持つ沙樹。自分が持っていないものを持つ人に惹かれ求めるというやつなのでしょうか。最後まで、少しの気持ちの揺れも描き漏らすことなく丁寧に描かれていて、引き込まれました。正直、すぐ言葉にならない読後感でしたが、確かにそこには救いがあって、ありのままの自分と付き合っていこうとする2人が優しく重なり合って寄り添う姿に癒されます。
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