このレビューはネタバレを含みます▼
救われない。
だけど救えた。
万全な未来ではないかもしれない。
より良い未来でもないかも知れない。
だけど、少なくとも「自覚の無い正義感」が齎した悪夢は変えられた。
「自分が変えてしまった未来の責任」を取ることは出来た。
これで良かったのかどうかは判らない。
救えた人たちは、本来なら「元々自分が余計なことさえしなければ救われていた人たち」だった。
自分が"変えてしまった"ことで、彼らは一度破滅した。
自分の邪悪な正義感が原因で破滅させてしまった彼らを救うために、自分が再び"変えた"ことで、彼らの破滅を回避出来た。
だが、一度"変えてしまった"ことで生まれた、破滅の責任、未来の歪みは
自分が最も愛する人の人生を狂わせるという結末で、報いを受けることになった。
自分の行いが原因で、愛したかった人を壊してしまった。
人格は人生が作り出す。
順風満帆に過ごしてきた人の人格と、全てを失った人の人格は、同じ人でも全く異なる。
主人公は、自分の行いの"責任"を、最も愛する人の人生に科すことになった。
それこそが、主人公に対する最大の"報い"となった。
変えてしまった"所業"。
起こしてしまった"責任"。
それらの全てを被る"報い"。
この作品のテーマは、主人公が生み出し、そして沈んだ、【報い】だと思います。
この漫画には、極悪人はたった一人しか出てきません。
その極悪人以外の全員が、運命に翻弄された善良な人たちです。
この漫画には、自覚の無い正義感で、あらゆる不幸と破滅と悲劇を生み出した元凶も、たった一人しか出てきません。
その元凶以外の全員が、彼の生み出した絶望の輪廻に付き合わされた哀れな被害者たちです。
極悪人に【報い】を。
元凶にも【報い】を。
正義とは、異なる角度から、違う立場から見た時に、悪魔の面を覗かせる。
それが自覚の無い正義なら尚更。
「彼が行ったことを、私は正しいとは思いません」。
ある人物が語ったこの言葉こそ、この作品を象徴するメッセージかも知れません。
まぁ長々と書きましたが、結論で何が言いたいかと言うと
「この漫画は絶対に、最後まで読んだほうが良い」ということです。