このレビューはネタバレを含みます▼
自分の恋愛対象が同性であることを小学生のころには自覚していた青柳はその恋心が報われることはなく、いつしか金銭を介した相手と体だけの関係になり、純粋な恋心は王子様を見つめることで満たしている。
セフ レとなった後輩とホテルから出たところを会社の上層部に見られ、双方合意の上の関係だったのに、保身に走った後輩に悪者にされ、青柳が一番知られたくなかった朝桐にゲイであることを知られてしまう。
仕事を辞めるしかないと思い詰めた青柳を引き留めるため、朝桐も人には知られたくない秘密を青柳に明かす。
真面目で何事にも一生懸命な青柳が意外と性欲に忠実で、でも、過去の辛い経験から恋と性欲をきっちり分けているところが辛い。
後輩との件は胸くそ案件だけれど、早めに退場してくれて良かった。朝桐の部屋を掃除するようになってからは青柳の一喜一憂する姿に感情移入してしまい、早合点や自己完結で喜んだり落ち込んだりする青柳と共に感情が乱高下してドキドキとハラハラが繰り返し襲ってくる。
結婚まで考えた女性がいた朝桐が同性の青柳を恋愛対象として意識するようになるだろうか、と思っていたら、性欲に忠実な青柳がニョキニョキと出てきて、ちゃんとBLになっていくところがうまいなぁと思った。
自分の気持ちより、相手がどうしたいかを考えてしまう朝桐が自分の心と向き合い、そこに青柳の兄が絡んでくるから面白い。自由人で傍若無人な感じのする兄が弟のことをきちんと見ていて大事に思っているところが見られたのも読後感の良さに繋がっていると思う。