私の胎の中の化け物
」のレビュー

私の胎の中の化け物

中村すすむ

すっ…ごい…※追記長文あり

ネタバレ
2024年7月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ 愛らしい顔からは想像もつかないほどえげつないことをする千夏ちゃんに惹きこまれて、既刊全部買ってしまいました。日常にある、ほんの少しの不満、理解されない苦しみ、不条理に対する怒りなど誰もが抱えてるそれを溢れさせたひとりの化け物。怖すぎる。なのに目が離せない。次は何をするの、もっとすごいことしてくれるの?とページをめくる手が止まりませんでした。さながら、千夏ちゃんに魅せられた悟くんや槐さんのように。千夏ちゃんがこの先どうなるか、彼女の胎に住み着いた化け物はどうなるか。最終巻を心待ちにしてます。※追記※千夏ちゃんはやはり誰にも理解されない化け物だったのですね。千夏ちゃんに向けてカッターで切りつけた悟くんが少しだけ同じ化け物になってくれることを期待していたのですが(絵をぼろぼろにされたと思ったあの時はクラスメイトに出来なかったことですしね……)、よくよく考えたら彼は元々鬱屈とした苛立ちを抱えつつも、行動に起こす前に『倫理観』が働いてしまう人間であったことに気付いて、だから最後に裏切られた?(信頼されてなかった?)と分かって襲いかかるも、あと一歩が踏み切れずに化け物になる機会を、千夏ちゃんとずっと共にいる機会を永遠に逃してしまったのかな……と少しだけ切なくなってしまいました。そして千夏ちゃんも、壊れたおもちゃを捨てるようにスゥッと興味が引いて悟くんと槐さん二人を置いていってしまう。その後の千夏ちゃんのことは多くは語られず、成長した悟くんが見た、幻覚のような、そこにまだそのままで存在しているような中学生のままの千夏ちゃんの楽しそうな笑顔で話は終わります。あとがきでも作者さんが仰られてましたが彼女はずっと自由気ままに勝手をして過ごしていくのでしょうね。誰も彼女の胎の中にいる化け物には触れられず、抱くことも出来ず、また殺すこともできないままに。ゾッとして、読んでいるこちらの中身まで暴かれていくようで、でもそれがどこか心地いい。何度も読み返すと思います。素晴らしい話でした。
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