セイントアダムズ
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セイントアダムズ

庄司陽子

異次元?別世界?な華やかさ

ネタバレ
2014年5月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ まだ学生だった頃、読んだ記憶があり、懐かしさのあまり購入。読み進めていくうちに内容も思いだし、ああ、旧き良き時代の中に戻され、夢見つつのあの懐かしさが甦る。いつも冷静で切れ者の長男森生、華やかだが実はどこか冷めている感じの次男樹生、明るく純粋で人情深く人懐っこい三男の杉生の三者三様魅力的な3兄弟の話。三者三様いろんな恋愛、人間関係、ビジネス等のトラブルを乗り越えていくうちに各々が関わる人々の影響でより魅力的な大人になり、独立していくというストーリー。ただ、現在の女性漫画と違うのは、ストーリー構成が現在のものより随分練れている点、展開もかなりいい意味で予想を裏切られる。一番裏切られたのは、杉生がラストまで麗香に愛情を注いだこと。普通ならあそこまでされると愛なんて覚めてドン引きする所なんだが……?あと、三兄弟の中で一番しっかり者でスキのない冷静な長兄の森生が実は情に厚く、何でも一人で背負い込んでいた為に一番大人になりきれていなかったこと。情に厚すぎた為に、まゆこさんが目前で身投げした後はとても見る影もなかったのはやはりこの作家さんの旨いところ。樹生は投げやり的な所と冷めた所がなくなり、三人の中では一番冷静に判断できる人だったということ。杉生は元から愛されキャラだけど相変わらず自分を曲げず(そういう意味では一番我儘)で図太くかつしなやかなまま大人の男に成長。最初から三人とも自分のポリシーを曲げない、ブレない点は現在のすぐに流されがちな若者に見習って欲しい点。三人の回りを飾っている女性キャラクターの心理描写も見事。小娘時代に読んでも判らなかった細かな事情も今なら判る。非日常的な舞台設定ながら人間くさい所も好き。大作ならではの、ちょっぴり大人向けな読みごたえ充分な満足感ある作品。絵は若干古くも感じますが、それ以上に綺麗。私個人としてはこの作者さんの代表作『生徒諸君!』シリーズよりオススメします。
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