ANIMAL X【新装版】
」のレビュー

ANIMAL X【新装版】

杉本亜未

今でも全く色褪せない不朽の名作。

ネタバレ
2024年7月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ こんな大作に出会えるとは。今まで出会えなかったことを悔やみますが、2024年今でも色褪せないどころか、斬新な作品に驚き感動しました。
まさかあの湊少年がここまでいい男に成長するとは。
巻を追うごとに成長を遂げる湊という男、裕司への真っ直ぐな愛が彼を間違いなくここまで大人にしたのが伝わり胸が熱いです。
彼の変わらないところといえば、「大好き!」と言葉だけでなく感情を全身で表現するところ。最初の頃と変わらない子供らしさを残し、愛しくもあります。
この真っ直ぐさに裕司は惹かれ、そして救われたのだろうと。
最初はあまりにも横暴で、血族は本当に人間ではないのだと恐怖を感じる描写でした。価値観も何もかもそうですが、村のみんなで裕司を狙う描写や話の通じなさが、先生の画力も相まって怖い。
血族といえば、この作品の脇を固める裕司を想う男たち、大変魅力的でした…白川さんと申、特に好きです。
最後まで見届けて少し心配を感じたのが、裕司と湊の娘。女の子は血族の雌としての宿命を背負うのだろうかと…もし本人が望んだとしても、人間とのハーフというのもあり、やはり女性目線で読んでしまうと考えるものがあります。勿論作品で学んだ通り文化は尊重しますが、港の母親も多産で亡くなっているので…杉本先生のあとがきにも大丈夫でしょう!とのことなので、間違いなく幸せになる!!と信じて裕司と湊家族への想いを馳せたいと思います。
そしてレノ・シュトルム、なぜ自ら死を選んだのか、考えます。
昨今のBLが一巻完結型で物足りないことも多くある中、長編作かつ切り込んだANIMAL X、是非これからのBLにも求めたいほどの名作でした。もう何年も前の作品なのに他の追随を許さない作品。杉本先生のあとがきに、某社の編集者からかけられた心無い言葉。先人の苦労の元に今の豊作なBLがあるのだと。そしてオメガバースの礎とも言えるこちらの作品は、本当に多方面での影響力が大きかったに違いありません。
このような素晴らしい作品に出会えるのであれば、私もまた生まれたい。そう思わずにいられません。
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