恋も過ぎれば【電子限定描き下ろし付き】
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恋も過ぎれば【電子限定描き下ろし付き】

上田アキ

白川の性質を許容できるかが評価の肝かも

ネタバレ
2024年7月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『恋が満ちたら』に登場した革職人の白川が主人公となったスピンオフ。

白川は無自覚な人たらしで、『恋が満ちたら』の伊瀬に横恋慕する当て馬かな? と思ったら全然違っていて、素で人との距離が近い人物だった。こういうタイプの人を好きになったら大変だろうなとお相手の蘇芳に同情してしまう。


イベントで知り合った家具職人の蘇芳と白川がある出来事から一緒に飲むことになり、酔った白川を介抱した蘇芳が誘われるように一夜を共にし、その後、付き合うことになる。

体から始まった二人は明確な好意を伝えることなく、大人な関係のように進んでいくのに、実は二人とも不器用で臆病な面を持っているのがチラチラと見え隠れし、本音や願い事はきちんと言わないと正しく伝わらないから、案の定、すれ違いが発生。


白川は人を惑わす、たらしな男だと思っていたけれど、読み進めていくと、相手に対して何の思惑もないから距離が近くても特別な感情を抱くことはなく、自分の感情が凪だから相手が自分をどう見るかというところまで考えが及ばない、ある意味、罪作りな男だった。

蘇芳の自分に対する気持ち、自分の蘇芳に対する気持ちを自覚してからは人との距離感を意識するようになり、不意に近付く蘇芳にドギマギする様子を見ると白川もずいぶん変わったなぁと思わずニマニマ。

それでも、白川の無自覚な人たらしのターンが長いから、白川の性質を許容できないとこの作品を好きになれないかもしれない。
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