夜明けのポラリス
」のレビュー

夜明けのポラリス

嘉島ちあき

人のこころはままならない

ネタバレ
2024年9月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 1巻はわりとポップな印象で、ああ、よくあるDKが美人教師を追いかけるラブコメなのねーなんて思ってました。
2巻でくっついてラブラブしつつ、当て馬が出てきてひと悶着あるのかな?と思っていたんですが、ページを捲るごとに、おや?なんかポップじゃなくなってきたぞ・・・と妙な緊張感が。
そしてまさかの展開・・・からの、6年。
えーーーーここで、この終わり方で次巻へ続く!?
呆然としたのを覚えています。
ここで長らく続きが読めなかったもので、正直、この作品のことは、記憶の片隅に追いやられていました。
そんな折、「新刊」通知が。
あれ?この作品どんな話だったっけ・・・?と思い、2巻から読み返したら、どんどん蘇ってくる記憶。
3巻については、なかなか心の整理がつかない由良がもどかしく、どこか重苦しい気持ちを抱えたまま読み進めたのですが、何度かコミックス全巻を読み返してみて、(人のこころってそんな簡単じゃないよな)と思い返しました。
「大切だと思っていた人を忘れてしまうこと」には罪悪感を覚えるだろうし、「ずっと一人の人を好きでいなければならない」と、自分で自分に呪いをかけてしまうのも無理はない。
「自分だけが幸せになる事が許せない」という気持ちも、由良ちゃんが抱くのは当然だったと思う。
この気持ちを乗り越えるのに、6年は必要な時間だったんです。
自分を許し、悲しみや喪失感・罪悪感から解き放たれるのに、必要だった。
そして恐らくは、そんな由良ちゃんを受け止められるくらい大きな器に、煌星が成長するのにも必要な時間だった。
6年間、音信不通のまま由良ちゃんを想い続けた煌星は、それが愛なのか執着なのか何度も迷ったと思う。
でも、ただただ由良ちゃんの笑った顔を見たくて待ち続けたのは、間違いなく愛だよね。
本当に、素晴らしくイイ男に成長したよ、煌星は。
大きく両手を広げて、ここが由良ちゃんの帰る場所だよ!って、常に北極星のように由良ちゃんに道を示し続けた煌星に最大限の賛辞を送りたい。
2人が結ばれたシーンは、静かで、じんわりと暖かくて、零れた涙が美しかったです。心に残る名シーンだった。
まだまだ書きたい感想はあるけれど、、、こんなに素晴らしい作品を送り出してくださった嘉島ちあき先生に、深く感謝申し上げます。未読の方には、途中苦しい展開が続くけど、ぜひ読んでみて欲しい。
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