毒王は棘姫を寵愛する
」のレビュー

毒王は棘姫を寵愛する

ARUKU

意外に現実的

ネタバレ
2024年10月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ ARUKU沼に落ちて早数日…片っ端から既刊を読み漁っています。
そして「雨傘」「昨日君」「嫌い大嫌い」など快作が続く中で最も印象を裏切られたのが、この作品…いやメルヘンちゃうんかい。
「王」に「姫」などといかにもなメルヘンタイトルを真っ向から裏切る、科学的根拠に基づいていそうなオチに仰天しました。

人との接触により皮膚に棘が刺さるという謎の病に悩む美形リーマン×毒に詳しい俺様医者。
織部は原因を突き止めるべく病院を転々としていたが鰐淵という異色の医者にだけはなぜか触れることができ、織部は鰐淵を鎮痛剤がわりに、鰐淵は人に興味を持てない自分を検証する体で利害関係から交際がスタート。
いざ付き合いはじめたらいろいろと相性が良くキスもエッチも盛りだくさんの激甘な幸せに浸る2人だが、織部はある治験を受けて以来再び病に悩まされるように。
負担にならないよう鰐淵と別れる決心をし、愛おしそうに寝顔を見つめる織部。その表情がどうしようもなく切ないんだ…
それから病気の原因を突き止めた鰐淵が織部の後を追う胸熱展開にわたしの目頭は熱くなり、職がなくなるかもしれないのに鰐淵の背中を押した地味な助手には満点をあげたくなった。

というわけで、織部が精神的に病んでいるから“棘“が具現化したのかと思いきや、普通に薬で抑えられる病だったというまさかの物理オチ。
じゃあ何で薬も飲んでいないのに鰐淵だけは大丈夫だったのか?というモヤモヤは「運命」という便利な濁しでめでたしめでたし。

お目めキラキラで絡み合うシーンが壁画っぽいのはご愛嬌。脳内エロフィルターでいくらでもカバーは可能です。
おまけにARUKU作品に登場する女子はキレッキレに嫉妬深くてたいてい性格が歪んでいるのだけれど、この作品に登場する女子は漢前。織部はじめARUKU作品の主人公は、お相手のダーリンはもちろんのこと手強い醜女をも浄化するから末おそろしい。

※ちなみにわたしはこの作品で「博覧強記」という四字熟語を知りました。
先生の作品はエモーショナルなうえ勉強にもなる。
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