半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
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半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

有馬嵐

子供の時期を持っていない白木に涙。

ネタバレ
2024年10月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 過酷な生活環境下で生きる白木と大家族、愛情深い黒川。ただのクラスメイトの二人のが、黒川の救ってあげたいという思いからはじまる3日間の逃避行。

大家族のお兄ちゃんらしく振舞う黒川に白木はどんなに救われたんだろう。
黒川はこの期間、白木に与え続けます。受け取ることを知らなかった白木が望むことを知り戸惑っても黒木のお兄ちゃん的フォロー力。
一方、黒木は普通の愛情深い家庭で育ったまだ子供で、どうにかしなくてはと思い逃避行に突入するも、どうしたらいいのかに迷う。その迷いを白木は察します。

結局は救ってあげられなかったと自己嫌悪する黒川は、白木に救いを与えていたとも知らずに、忘れたいと感情のふたをする。
思い出は白木を強くし、拠り所になっていた。

大人になって偶然再会して友達のような関係になる二人。二人が仲良くしているシーンに挟み込まれる白木の悲惨すぎる生い立ち。

やっぱり黒川のことが好きとの告白。
救ってあげられなかったことの後悔を語る黒川に「半分持っていてくれたんだね」と言える成熟した白木が悲しかった。
自分が抱えるべき問題を黒川にも背負わせてしまった「返してね」って言葉は、黒川に罪悪感やらを持たなくていい、自分はあの逃避行から、可愛そうな子供ではないと、逃避行後していた行為は同じでも、彼はそれまでの生活から一段高い場所に上がっていたって思ってる。

もう辛い。白木はそう思って腐れらずに生きていたかもしれないけど、本当はそんなことひとつも知る必要もなかったことなのに。
白木の母親や客の男たちへの怒りの感情に飲み込まれそうでした。

「全部持って行かないで」と、これからもこの想いを二人で抱えていこうとする黒川。

黒川に出会えたことが彼にとって希望になったんだとありきたりだけど、どうか二人が幸せになりますようにと願わずにいられません。

白木の生い立ちがショッキングで、1度目は周囲の大人たちへの怒りの感情で読み込むことが出来ず、日にちを置いて何度か再読して黒川にも寄り添うことが出来るようになりました。この先も再読していきたい作品。
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