死にかけ悪役令嬢の失踪~改心しても無駄だったので初恋の人がさらってくれました~
和泉杏花/ささきさ/鈴ノ助
このレビューはネタバレを含みます▼
両親や妹、元婚約者から感じる薄気味悪さ(思慮の浅さ)は、設定に縛られたゲームキャラクターと考えれば納得です。姉もその中の一人だったはずが転生した現実の人間の魂が入ってしまった事でズレが生じます。それ以外の人達がいたって客観的で常識的なのは、ゲームヒロインである妹と深く関わらないせいだと思います。
両親はヒロインである妹をハッピーエンドに導く為の補正要員です。善良な家族とそれに反発する姉という前提を保ったまま姉を家から出さなければいけません。そうしないとストーリーが進まないからです。その為に姉が出て行きたくなるように悪気無く姉に家の負担を押し付け続けます。自分の未来を知っている姉は自分が家から出ると破滅だと思い、盲目的に家族に尽くし意地でも家から出ません。我慢比べのようになった究極が、母のうっかりミスで姉を魔獣だらけの場所に放置する事でした。ここでも母は悪気が無く、善良な家族を保ったまま。この後で両親と妹が反省するのは、姉を追い出した事で姉に負担を掛ける役目を終えたからと思います。
妹中心の物語で見ると(色々あったけれど)姉は家を出て自分は王太子と婚約、両親に祝福されて未来の王妃になるハッピーエンドとゲーム通りの結末です。
…もしかしたら、最初から姉が家を出た時点で妹の邪魔をしない存在と見なされ悪役から解放される設定だったのかも知れません。ゲームの中の姉が破滅したのは転生後の姉と違って、自活する為のスキルが無かったからです。海に魅了されて発揮した能力もフォード先生との恋も、転生後の姉だったからこそです。とてつもなく遠回りと痛い思いをして、姉もハッピーエンドを掴んだのでした。
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