編まずに愛して
」のレビュー

編まずに愛して

烏城あきら

ただただうれしい

ネタバレ
2024年11月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 先生の、お久しぶりの完全新作の文庫!これが発売されると島で教えてもらったときの感動たるや、ずっと楽しみにしていた。烏城先生の近況が気になりすぎて、思わずあとがきから読んじまったよ。お元気そうでほんとによかった。
大手商社に勤める真也は、副業でセレクトショップを営んでいて、そのセレクトショップで、「作った本人でも売れないと思っているけれど、実は万人にはわかりづらいような魅力がある物」を売るのが大好きというキャラ。この真也が、他部署の先輩である祐司が手編みしたセーターを、自分のセレクトショップで売ることになり、そこから二人のあれやこれやが展開されるというコメディ。表紙には「この人、マジで変態だ。」と書かれているが、編み物男子である祐司は確かに変わったところがあって、飄々としてつかみどころがないのだけれど、「マジで変態」と言われるほどのことはなかったように思った。とはいえ私がBLの読みすぎで、BL変態免疫ができてしまったせいで、変態を正確に判別できなくなっているだけかもしれないが。
全体的に淡々とした話で、いまひとつ盛り上がりに欠けたかも。クスッと笑えるところもあったし、するすると読めてしまったのだけれど、モノを売ることに情熱を捧げているはずの真也のその熱さのようなものが、お話の中であまり感じられなかったかな。真也と祐司がいたすことになる展開も唐突に感じた。濡れ場は最後の方に少し。ちなみにこれって挿入はしてないってことでいいのか?判断つかずにいる(笑)
商社に勤めるエリートという設定なのに、そこに焦点を当てず、副業の方にスポットを当てる感じは好き。余計な糖分を入れない潔さとか、登場人物たちがとってつけたようなトラウマやコンプレックスを抱えていないこと、気取らない感じの作風は、先生の他作品にもある美点だと思っていて、この作品でもそのよさはあった。ところで何であの店名なのかな、考えてしまう。
真也も祐司もわが道をいく、この世の中にたくさんいるであろう「迷惑にならない程度の変態さんたち」で、二人の気持ちも関係も、まだまだこれからというところでお話が終わってしまうので、もう少し彼らのキャラというか、気持ちみたいなものをじっくり掘り下げて読んでみたかった。
先生、ちょっとと言わずこれからも、末永く息を続けてください!また作品読めて、ほんとに嬉しかったです!!
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