【電子版限定特典付】 少年の名はジルベール
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【電子版限定特典付】 少年の名はジルベール

竹宮惠子

増山さんの存在

ネタバレ
2024年12月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 島でご紹介があった作品がセールになったので購入。
私は竹宮先生の作品を読んだことがないのですが、以前に行った「はじめてのBL展」で竹宮先生の絵を見て、その半生には興味を持っていました。
最近は昭和に活躍した漫画家さんがコミックエッセイで当時の思い出を語る作品も増えてきたので、こちらの本を読むのが楽しみだった。
ちょっとドキドキしながら読んだのですが、期待以上に面白かった!
デビューしたての新人の頃の記憶をここまで詳細に憶えている記憶力。
昔のできごとは誰でも記憶違いが出てくると思うので、実際とは少し違う部分もあるかもしれないですが、それは些細なことで、竹宮先生が駆け出しの時代に抱いた想いや悔しさがダイレクトに伝わってきます。
一人の漫画家として真剣に向き合ってくれたのだろう編集部のYさん。
竹宮先生の友人でもあり、よきライバルの萩尾先生。
さまざまな縁が竹宮先生の作品に影響を及ぼしたと思いますが、特に私の関心を引いたのは増山さんでした。
作品内では増山さんは裕福なお嬢様に思えますが、その話す内容や行動は情熱があり、若い頃に抱える鬱屈した感情や怒り、もどかしさが垣間見えます。
一読しただけなので、これはあくまでも私の印象に過ぎませんが、地方から来た竹宮先生にとって、東京で育った増山さんはあらゆる流行の最先端を教えてくれる友人であり、師匠的な存在だったのかなと。
増山さんのリーダーシップが強いので、見方を変えると一種の洗脳や、自分の思い通りに周囲を動かそうとする強引なフィクサー的な人物にも見えます。
竹宮先生と編集者との打ち合わせにも同伴し、プロデュース活動に励む増山さんの気概に私は驚きました。
おそらく、この当時は21~22歳くらいの若い女性で、世間から見れば新人漫画家の友人という枠だと思います。
最初は萩尾先生のペンフレンドだった彼女が、いずれは多くの漫画家たちの中心となり、発破をかけていく。
私は若い頃の友情は無意識に「力関係」「マウントの取り合い」が出ると思っています。
相手が漫画家だったら(私の場合)つい自分が遠慮して、竹宮先生を立てていくことを考えるのに、増山さんは物怖じせずに向かっていく。
その強い意志が非常に魅力的に感じました。もっと彼女について書き込みたいと思ったのですが、文字数が足りないのでこの辺で。
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