君は放課後インソムニア
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君は放課後インソムニア

オジロマコト

最終回で神作になり損ねた感あり

ネタバレ
2025年1月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大学受験編まではただひたすら「この子達が幸せになりますように」と祈る気持ちで無我夢中で読んでいて、これは稀にみる神作だ!と半ば確信していた。しかし「他県に大学進学したい」と展開になったあたりで行き場のないモヤモヤを抱えてしまい、それ以降物語に没入出来なくなってしまった。

このモヤモヤは作者との医学的解釈の違いで、実は2度あった。1度目のモヤモヤは【不眠症を親に隠していたこと】。これは物語の要になるので仕方がなかったとしても、不眠症がもたらす心臓への負担を考えれば、眠剤や抗不安薬などで薬物療法すべきだったのではないだろうか。長期間に渡る不眠症は心臓や余命への影響が少なからずあっただろう。そして2度目のモヤモヤは【起立性調節障害を抱えているのに大学進学を機に保護者のもとを離れる選択をしたこと】。この障害はコントロール出来ない。(これは家族が実際に抱えている障害なので、苦しんでいるところをずっと見てきた。家から出ることもすら困難になって高3で通信制に編入したり、二十歳を超えた今も症状が出る)。県外に進学したとして、症状が不定期または頻繁に起きた場合、どうするつもりだったのだろうか。症状の出方にも大小があり、毎回入院するレベルでないからこそ厄介な障害だ。入院対象にならず、自宅安静の場合は誰が面倒をみる?お目付け役だったヒーローは県内残るので無理だし、進学先の大学の友達にでも協力してもらうつもりだったのだろうか?保護責任を転嫁させられる側に対してあまりに無責任な話だ。わたしは医療従事者の末端として、またこの障害をもつ子どもの親として、どうにもこの選択に賛同出来ずにモヤモヤが残ってしまった。

そして、何と言っても『最終回が不完全燃焼』だったことが残念だった。この最終回はいくつか不自然な描写があり、個人的解釈としては【ヒロインは卒業式の日に倒れて、結局はそのまま亡くなった】【ラストはヒロインの願った未来】なのではないかと思っている。精一杯真っ直ぐに生きてきた子達を見守ってきたからこそ、どんな最後(最期)であったとしても「頑張って生きたね」と褒め倒して見送りたかった。正面から生死に向き合っていた作品だったのに、最後の最後で読者の想像に委ねるような曖昧な最終回になったことで、神作になり損ねてしまった感が否めない。大好きだっただけに非常に残念だ。
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