それから、君を考える
」のレビュー

それから、君を考える

小松

どえらい短編集もあったもんだ

ネタバレ
2025年1月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作品を能動的に読むか受動的に読むかで評価の分かれそうな作者さまかな、と。
わたしにはブッ刺さりました。全てが。開始3ページくらいから最後まで泣いてました…
作品詳細にも記載されていなかったしレビューもろくに読まず、これがデビュー短編集であることを知らずに読んでしまったので…一作目『それから、君を考える』は素晴らしいんだけれども突然の終了で消化不良。再会までの紆余曲折を期待していただけにシャッターを閉められたような感覚に。その先を連想させるタイトルの意味と巻末にあるたった2ページのエピソードからなんとか妄想をふくらませ、最善の未来を想像することで呼吸を整え……
超ショートな二作目の『最後の命令』でさらに陰鬱な気分に。匂わせ含ませ、最後まで想像にお任せな話の運び方がなんともいえない背徳感を誘う。具体的な描写は一切省かれ、佐野の視点と思い出を軸に話が展開されていくので、受動的に読んだらばこれは物足りなく感じてしまうだろうな…と余計な心配をしつつも佐野曰く“周防の色欲が絡んだ命令“に思いを馳せ、いつの間にか垂れ流していたよだれを拭きつつ…
三作目『Young oh!oh!』で悩める男子校生の青いエキスと淡い葛藤を養分になんとかメンタルを持ち直し、あっという間の四作目…『夜明け前が一番暗い』。
家庭崩壊を間近に迎えた高校生の要と幼馴染の大輔が肩を寄せ合い困難を乗り越え結ばれていく大人顔負けのヒューマンドラマ(なにせ10年前の作品。コンプラに引っかかりそうな仕草も多いのでご注意)。彼らをとりまく大人の方が子供のように甘えていて、大輔なんかはそこらへんの大人よりも大人でカッコよかった。そうなんです、この短編集…攻めが全員かっこいい。
受けに好かれたいがためにかっこつけるでもなしに、受けにとっての最適解を優先するやせ我慢に上質な男気を感じずにはいられないのです。
四作とも短編なのがもったいない。全作品続編を描いていただきたいくらいどれも印象深く心に刺さったのだけれど、近頃は活動されていないご様子…完結を待たず配信済みの単話に手を出す日も近い。
新作でもなんでもお待ちしております。
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