母という呪縛 娘という牢獄
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母という呪縛 娘という牢獄

齊藤彩/Sato君

親子の関係は人格を左右する

ネタバレ
2025年2月3日
このレビューはネタバレを含みます▼ モラハラDV夫なら、シェルターに逃げて接近禁止令という手段で夫から解放される人は少なくない。
何故なら夫は他人であり、夫と出会う前には良し悪しを判断する術を人生で多少なりとも学んでいる。何より夫は他人だ。
でも、この主人公の様に、生まれてからずっと母親から棘の様に絡み付かれているなら、「これはおかしい」「自分を守る為なら、自分に危害を加える相手を法的に訴えても良い」等の思考回路が芽生えるチャンスも著しく削減される。何より、母親だ。
モラハラDV夫を法的に粛清しても、現実に○害する例は少ない。
この主人公は、母親に法的措置はしなかったが、実際に○害した。
この事件には『愛憎』という言葉を深く感じる。

ところで、以下はワタクシ事です。
私の母親は毒親という程ではなかったけど、この物語の主人公の母親と同じく、小学校低学年まで自宅では私の横に付きっきりで、私が算数の計算や時計の時刻の計り方を間違えると、即座に平手打ちされたのを覚えている。
伯父(小学校教師で私の家庭教師)も、小学校高学年からは母とバトンタッチして同じ様に私が勉強するのを凝視しながら、私が間違うと、即、平手打ちした。

中学からは自分で勉強出来るようになったけど、あの2人の悪影響は未だに負の遺産として残っている。
社会人になった今も、横に誰かが来るとひきつって思考回路が止まる。
私は小学校までで解放されても一生もののトラウマを持ってるのだから、この主人公の人生を蝕む物がどれ程大きいか、考えると酷く重い。

母親を殺した後で、「モンスターはいなくなった」とSNSに挙げていた。
私の場合、母が亡くなった時は悲しかったが、伯父が亡くなった時は「ああ、やっといなくなったんだな…」みたいな事をふと思った気がする。

教育って、勉強を教えるより、1人の人間を出来るだけ真っ直ぐ育てる方が遥かに重要で遥かに難しいと思う。
私は子を持つ事を拒否し、今に至る。

この話に戻る。
こう言ってはいけないのは百も承知だけど、母親が息絶える迄に、なぜ自分は娘から○されるのかを、少しは思い当たってたならいいなと思ってしまう。寝落ちして何も考えてないまま○ぬのでなく。

この事件は、出所後の彼女がどう生きて行ってくれるかまだわからないけど、他人に寄り添う仕事をしてみたいとご本人が獄中で仰ってる。心より彼女の救いを祈りたい。
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