このレビューはネタバレを含みます▼
読んでいる最中も読後も、はぁぁぁぁと詠嘆してばかりでした。
これまで読んだオメガバース作品の中で断トツ好きです。
本能に流されず、ひたすら理性的に相手を想い、内側にグッと情熱を秘めて、沸々と静かに、でも確かに相手を強く強く求め愛する和己と波止の物語から目が離せませんでした。
早寝電灯先生のオメガバースということと、試し読みでとても続きが気になったので買ったんですが、こんなに感情を揺さぶられる作品だとは予想外でした。
オメガバースと言えば、本能のまま無理矢理に身体を奪ったり、一部のαが超傲慢だったり、Ωが人権を踏み躙られて大勢の慰み者になっていたり・・・というような作品が多いと思いますが、この作品はそうじゃなかった。相手を一人の人間として尊重し、友達から関係を始め、健全な交流を重ねて少しずつ関係を深めていくんですが、その過程が非常に丁寧に描かれていて、ある意味、オメガバースらしくない作品だったと思います。人間関係って本来こうやってちょっとずつ深めていくものだよねって、当たり前なんだけど、すごく新鮮な発見をしたように思います。第二次性に翻弄される事なく、普通でありたいとひたすら努めてきた二人ですが、やがて同じ船に乗り、たゆたいながら、共に生きる道を進んでいく。気持ちが通じ合う場面、初めて一つになる場面、番になる場面・・・どれも温かく、優しさが溢れていて素敵でした。描き下ろしで明かされた和己の密かな独占欲には、ちょっとドキッとしました。笑。とっても満足度の高い読後感でしたし、叶うなら、二人のその後や波止の兄&スウさんのお話も読みたいです。