無職情緒




仕事に忙殺されていた結婚時代、幼い子供へ辛く当たってしまった記憶の重荷、離婚の傷。振り返れば挫折してしまった彼女の人生は、会社の倒産という形で幕を閉じた。会社は再就職の口を利いてくれないでもなかったが、彼女は思うところがあって、1年間は無職でいようと決めた。
静かに暮らすと気づく、周囲の生活音。
彼女は今まで、そんな小さな物音に心を通わせる余裕はなかった。子供に手を振り上げた瞬間は、生活音が彼女を攻撃し、責め立てているようだった。彼女の閉塞感は膨れあがり、破裂寸前だった。
彼女は無職になったことで、挫折した自己をゆっくり見つめ、生きている事を無職という角度から確認している。その暮らしはきちんとしたもので、彼女が決意を持って無職になった意志と姿勢をしっかり表現している。
主人公は美少女でもなければ女盛りの熟れた34歳でもない。今時珍しいくらい質素で地味な34歳だ、漫画としてのヴィジュアルは男性読者を惹きつけるものはないのかもしれない。
だが私は、去年の夏、この無職情緒がとても胸に響いたのを覚えている。
私自身が結婚のため、三ヶ月無職になったからだ。
無職から見る世の中は、働いていたときとは180度違う。生活の端々に、退屈と情緒と季節のにおいがあるのだ。
この漫画は、電子ではなく是非とも紙で読んでもらいたい。ページを捲る音や匂いが主人公の情緒と絡み合って、より世界観に浸れるからだ。
電子書籍では、その良さは半分も伝わってこない。その点で☆マイナスひとつ。
また、情緒を表す手法としてこの作品は、出来るだけ無音の描写を心がけている。文字がほとんどないので、作品に共感できなければ本当に面白みのない「………」になることと思う。
このレビューを読んで、少しでも購入前の気持ちの落差が狭まればと思います。
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