チ。―地球の運動について―
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チ。―地球の運動について―

魚豊

なぜあのラストだったのか

ネタバレ
2025年4月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ 『進撃の巨人』以降自分の中でハマれる漫画というのがなかったのだが、本作で久々に世界観のめり込むという体験をした。
教義や信仰に阻まれつつ「地動説」を追い求め命を懸けたフベルト、ラファウ、オクジー、バデーニ。
「地動説」を愛したヨレンタと「地動説」に翻弄されたノヴァク。
ヨレンタの理想を引き継いだシュミットと意志を託されたドゥラカ。
時代の中で様々な思いが交錯し「真理」を求めようとしている。

「チ」という音一つに「地」、「知」、「血」など複数の意味が込められている根拠も胸に刺さった。
壮大な物語の最後がどうなるのか先を知りたい気持ちでページを繰ったが……ラストは意外性に満ちたものだった。
作者の魚豊先生曰く
「不思議にしたかった」、「変な嘘をつきたかった」
ということらしいのだが、

(以下、ネタバレ↓)

アルベルトの父を殺した人間を「ラファウ」にする必要性は本当にあったのか。
私はこれが疑問でならないし、本作にハマりこんだ人間としては悲しみすら感じている。

物語の起点にして地球を動かした愚かで純粋な12歳が、(別人とはいえ)なぜこのような汚れ方をしなければならなかったのか。
ラファウを再登場させたいのなら、ただの家庭教師という立場で出すだけで良かったのではないか。
思い入れが強すぎるのかもしれないが、私は「ラファウに殺人をさせること」をどうしても肯定的には受け止められない。
それは謎にもならないし、ましてファンサービスにもならないと思う。

物語の最後にラファウが青年として出てくれたことは、別人だとしてもとても嬉しかった。
(フィクションだからこそ)それを綺麗なまま終わらせて欲しいというのは私の我がままなのだろうか。
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