何度も読み返す





2025年5月5日
何度も読み返します。その度に違う発見があります。初めは作者が路上ファイトを実地で体験しているらしきコメントが面白くて博物モノとして楽しみました。今は、人間の習性の描写の深さに目が行きます。男性のプライドの描写(ボクシングの山﨑や空手の長田がとくに白眉です)、とにかくプライドが高く反面"みっともなさ"に敏感な脆さの表現がすごいです。負けても強い相手に"相手にされたか""眼中にあったか"という格闘技、喧嘩の勝敗の世界でなくては描けない男性の本能みたいなものの描写が抜き身のように鋭い。あと、主人公の劣等感、分離感の描写。これは男女問わずの感覚です。伊沢さんショウゴくん、タカさんなど、その人たちに勝っていても尊敬するその人たちとダメな自分は一線を画していて別の世界の人なんだ、と分離してしまう人間の癖。同列に立ちたい、相手にされたい、という依存的欲求がさらなる闘争にかりたてる。そして、喧嘩で渡り合うためには相手を叩きのめしていい相手として分離し切るマインドセット。でも分離の先には分離しかない行き詰まり感。この人間の負のループがとてもよく描かれています。
本当によくやっている、よくここまでやった、と自分で自分を認められるその日まで人間たちの際限ない分離の旅は続く。ヤンキーであってもカタギであっても。
本当によくやっている、よくここまでやった、と自分で自分を認められるその日まで人間たちの際限ない分離の旅は続く。ヤンキーであってもカタギであっても。

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Cmoa さん
(男性/40代) 総レビュー数:12件