このレビューはネタバレを含みます▼
でん蔵先生といえば、直腸断面図。
ところがこの作品は断面図どころかエチな雰囲気はまるで皆無。死に戻りヤンデレミステリー要素と、ラブもほんのちょっとくらいはあるだろうか?
「暇って言ったよな?じゃあ俺の宿題やっといて」
なんていう超絶理不尽ないじめっ子理論もすんなりとまかり通ってしまう、学級という閉鎖空間。カースト上位がOKを出したとでもいうように、織田の取り巻きはその日からこぞってNOの言えない香藤をいじめ始める。引きこもった香藤は親に持て余され、居場所もなく、織田を呪いついに手首を切るのだが…なぜか得体の知れない能力が宿ってしまう。
片や欲しいものはなんでも手に入る環境に恵まれ何においても要領よくこなしてきた織田にしてみれば、いじめを苦にスーサイドを図った香藤の苦悩など知る由もない。バカはどいつもこいつも俺を好きになると勘違いして生きていたので、事故をきっかけに周囲の心の声が聞こえるようになり、激しい人間不信に陥ってしまう。だからこそ先に能力の発動した香藤を神だと信じ崇めるのに時間はかからなかった。そしてお互いの心の声だけが聞こえないという特殊性も相まって、そこから加速度的に2人だけの世界が構築されていく___
無気力から一転した織田の変わりようがまたすごい。殺人(香藤をいじめた同級生)に秘密の金儲けと、恵まれた全能力を今度は香藤のためだけに駆使するのだから…
それから香藤はトチ狂った織田にレイPされ徐々に能力を失うも(巫女みたい)、もはや憎むどころか捨てられやしないかと怯えるほどまでに織田に依存。それを知り喜びを隠せない織田…聞こえないはずの香藤の心の声をキャッチできるようになった時点で能力を失ったことには気付いていただろうに、心に裏表のない香藤だから手放せなくなったんだろうな。
織田がいないと生きていけなくなった香藤と、能力があろうとなかろうと香藤を手放すつもりなどない織田。隔離された箱庭で2人、いつまでもシアワセに暮らしていくのだろう。
いやよかった。
いい感じに仄暗く、正直ハッピーなのかバッドなのかわからないエンディングではありますが、贈られた首輪を喜ぶ香藤を見ると……「よかったね!」としか言えなくなるでん蔵マジック。