このレビューはネタバレを含みます▼
人を思うこと、思われることの怖さを知っている人が、人を思う気持ちは、強く誠実なものだと感じます。思い続けることの大変さとか、環境や気持ちの問題、それらに起因する失う恐怖。それに打ち勝ち信じ続けられる人だけが、自分と相手の未来を選びとることができる。
感情や思いの丈の擦り合わせ、互いに求めるものの共有の難しさを常日頃感じます。正確に言えばそれらが他の誰かと完全に一致することはありえないのですが、それでも相互理解をしようと努力を続けられる人の勇敢さが報われる話が好きです。正直、現代社会でそれを出会う人全員にやっていたら狂ってしまうし、成長してくると日常生活でリソースを他人に割くことの難しさが分かってきてしまうので、誰に対しても程よく諦めている、というのは、人あたりがいいという属性の要素の一つかなと思います。
翔平さんは、思いを自覚するのが早かった分、大人になるのも早かったのかな。元々人との交流が好きというのも成長を早めたと思いますが、だからこそ岳さんへの思いが諦めきれず割り切れないままここまで来てしまった、というような拗らせの面が映える。拗らせは幼さだし。でも片恋も拗らせも、要因は岳さんが片棒担いでるというのも可愛い。
岳さんが、翔平さんと対になるクソガキで良かったです。翔平さんに依存していて、自分と向き合わないからずっと幼いままで、だから価値観が偏っていることに気づかない。作中で、岳さんが変わろうとするのは翔平さんのためですが、その際にどうするべきかのヒントをくれるのは翔平さん以外の人なんですよね。最初から翔平さんも岳さんに依存していて取りられた二人の世界なら変化の必要はなかったのですが、翔平さんはそうではない。だから、自分の気持ちに恋と名付けて蓋をしているけど恋という情を知っている翔平さんと、恋情を知らない(見て見ぬふりをしていた)岳さんの間ですれ違いが起きる。岳さんは翔平さんと同じように、二人以外の人と話して、翔平さんのいる世界を知って価値観を擦り合わせる必要があった。彼に必要だったのは知ることで、渇望に名前をつけるだけだったのか、と気づいた時に一気に萌えに襲われました。拗らせ両片思い、この世で一番愛おしい!
人の思いの大切さと怖さを同時に知っている岳さんの、今後の強さに乞うご期待。こういう、成長の伸び代がある人の可能性、未来が開かれている感じがしてわくわくします