北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし
」のレビュー

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし

白樺鹿夜/江本マシメサ/あかねこ

ずっとこの世界に浸っていたくなる

ネタバレ
2025年6月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 国も歴史も文化も話す言葉も容姿も違う異国・他民族の人たちが、時に壁にぶつかり悩みながらも歩み寄り助け合って様々な縁が繋がっていき、自然の恵みや命をいただきながら一緒に食べて笑って思い出を作って…最初から最後まで本当に心が温かくなるお話でした。
日常を描いているので何か特異な事件が次々と起こるわけではないですが、北方の過酷な雪国の暮らしに興味深々で楽しく読ませていただきました。

この作品は魅力的なキャラクターがたくさんいて様々な家族(夫婦)の形が出てきますが、なによりもリツとジークが可愛すぎる!彼らの夫婦仲(仮期間含む)は本当に終始穏やかで、やり取りが微笑ましくて見ていて口角が上がりっぱなし。
今までの生き方が何もかも違っているからこそ相手に興味と理解を示し、相手の良いと思ったところを素直に褒め、心から気遣い、相手のために何かしてあげたいと考え、常日頃から感謝や謝罪、真っ直ぐな愛情を伝える。誰かに言われるでもなく自主的にそれを実行できる思いやりのある二人が素敵です。
お互いにとって相手は、どこか今の人生に閉塞感があって半ば諦めの境地で前への進み方がわからなくなっていた自身の心を溶かし、道の先を照らし新しい世界へと引っ張り上げてくれる太陽のような存在になっていくのが良すぎる。
他キャラの関係性にも言えることですが、きっかけと人生を左右する大きな決断がなければ道が交わることは一生なかったであろう人たちの出会いという奇跡を噛み締めてしまいます。
幕引きはかつて二人で食べて笑い合った場所、美しい光景を見た場所に二人の「宝」たちと一緒に…という構図になっていて感慨無量。

そして作品の世界観とマッチした画風も推したいポイント。豊かな自然や動物も、美味しそうな料理も素敵な服や家具、日用品、工芸品も、全て作者さんらしい優しく温かみのある細やかな絵で描かれているのが良い。
狩猟や採集から解体、調理、そして美味しそうに食す描写まで抜かりなし。狩猟・銃アドバイザーの方にもご指導を受けたそうで細かいところまで本当にこだわりがすごい。
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