星の降る教室
」のレビュー

星の降る教室

サノアサヒ

自ら選べるということ

ネタバレ
2025年6月18日
このレビューはネタバレを含みます▼ 星、宇宙、定時制高校、年齢も環境もばらばらな人々が育む絆…という設定で別の小説(ドラマ)を連想し、興味本位で購入してみました。

舞台は高校の夜間部。高認を取るために通う主人公・降田志津香は、家計を助けるために中学卒業後にホストクラブで働いてきた苦労人。ある日の下校中、線路内に横たわる同校昼間部の生徒・冴島柊星を発見する。周囲との違いに思い悩み自死しようとする柊星に寄り添い慰める志津香だったが、「好きになってもいいですか?」と、柊星が夜間部に転部してきて――歳の離れたクラスメイトになった二人が、生きづらい社会で息継ぎをするように恋に落ちるストーリー。

正直性行為までいくと思ってなくて、いやいや…27と17(途中で18になります)…これプラトニックじゃだめだったんですかね…という気持ちになりました、すみません。

志津香さんのハードモード人生といっても、ひとり親家庭の貧困問題に学歴差別、学費なんかは行政や社会保障の分野であって、その家庭に生まれただけの個人が背負うことじゃないとか、保護と引き換えに教育を奪う大人は果たして恩人なのかとか、かといって帰れる家のない少年に家に帰れとは言えないとか、多数派と違うというだけで自死を考えるほど追い詰められる社会の偏見や同調圧力とか、そちらの方に関心が向いてしまい、主軸の恋愛にあまりはまれませんでした。

少子化に伴い、夜間定時制の廃止方針がじわじわと広がりを見せているようですが、誰でも、どんな事情や環境であっても、学びたいと思ったときに学び始められる、学び直せる場が社会にあることの大切さを痛感します。

作家様あとがきの、「ほどけても切れてなければまた編めます」という言葉にもじーんとしました。
自ら切ってしまったり、切られたり、切らざるを得ないこともあると思うので、切れても新しい毛糸をもつことができる、そんな優しい社会になって欲しいと思いました。
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