雷々来世
」のレビュー

雷々来世

野白ぐり

胸がぎゅっとなるストーリー

ネタバレ
2025年6月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ ある国の王子と騎士の転生もの、と言ってしまえばそれまでなのに、胸がぎゅっと苦しくなるのはなぜなんだろう?
似た設定の話は主人公・七星(騎士)が言う通り、出尽くした感があるのに、この物語はひとつひとつの思い出に心切なくなります。
雷央(殿下)と七星の思い出はどれもささやかで、かわいらしい。劇的ではないけれど、繊細でロマンティック。
子供の頃からひとりで泣いている殿下を慰めるのが七星の役目で、殿下が成長するのを優しく見守るも、『独占欲』が心の奥に巣食ってしまう。
殿下が婿入りで隣国に行った時も、殿下に子供ができた時も(!)、見守ることしかできず、ついには⋯⋯。

ここで、わたしが読んで良かったなぁと思ったのは、よくある転生もののラノベのように、ふたりが死に別れする(内乱などによって)ではなく、ただふたりの暖かな、そして切ない記憶だけで物語が終わったところ。
「どうせどっちかが死ぬ時に来世でも守るって約束したんだろ」とうがった見方をしてたのですが、最後まで殿下と騎士のささやかな思い出の積み重ね、心のすれ違いにドキドキ。
とにかくそのストーリーが切なくて、ページをめくる指が、もったいないくらいでした。

物語の冒頭、あまり再会に好意的じゃないように見えた七星の胸の奥にある激しい想いの記憶に泣かされてください。

雷央は終始、かわいいです! 陛下になってからは麗しいという感じですが、殿下だった頃、現世、とてもかわいい。それは七星の庇護欲をそそったことでしょう。だってあんなにかわいいんですもの。
1巻完結なのは残念ですが、ささやかな前世の記憶の物語としてはこの長さで良かったと思います。戦争とかにならなくて良かった!

ネタバレ読んでもページをめくるのが惜しいくらいキュンキュンすること、保証しますので、安心して手に取ってください。
作者様が、丁寧に、丹念に作られた箱庭のような上質のおとぎ話を楽しめます。

なお、えっちぃシーンもちゃんとありますので、そちらをお望みの方も大丈夫です笑
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