このレビューはネタバレを含みます▼
作者買い。春田先生の、いい塩梅に悪趣味で、王道とちょっとずれてて、なんかようわからんけど萌えさせられてしまう作風が癖になるのと、絡みのアングルと腰の密着具合がけっこう好みなことが多くて大好きとまではいかないけど、割りと読んでる作家様。ただ、本作はちょっと肩透かしをくらったような気分。
主人公の羽鳥は嫌いではない。素直に自分の気持ちと向き合い、ストレートに好きだと言える受けは好き。一方で、時計のことを任せてくれと随分力が入ってたわりに、結局職人探しただけだったのは、最初あんなにねばったくせにそれ?と思ってしまった。華々しいサプライズを勝手に期待してしまったのです。羽鳥が有馬にひかれる過程もいまいち入り込めなかった。
有馬に関しては、BLでお決まりの、「過去の失恋のせいで一歩踏み出せない系」、かつ「一歩踏み出すには大人になりすぎてしまった系」男。とはいえまだ30歳。私からすればまだ芽吹いたばかりの若葉ちゃん、何をひるんどるんじゃ若人よ!と、言いたい。BLでは、この手の「もう年だから臆病」みたいなのり、ほんとによく見かけるけど、たいてい私から見たらひよっこちゃんたちで、うーん、お願いだからこんな早々に枯れさせないで、と思う(笑)春田先生にはこのありきたりな悩みを、もう少し悪趣味な感じにするぐらいの思い切りを期待してしまって、なんか残念。
脇役の猫田や犬飼は、なかなか癖のあるいいキャラで、むしろこっちの二人がどうにかなっちゃう話が読みたかった。犬飼なんて、無口で実はむっつりスケベな攻めなんてやらせたら美味しそう。
楽しいキャラたちが登場してるわりに、シェアハウスゆえの楽しさとか、おもしろさとか、エロスとかがもうひと押し出せていなかったような、もったいないなー。
当て馬くんは、ひと悶着起こさせるために無理やり付け足された感じで、中途半端。一体君は何しに来たの?と思ってしまいました。
春田先生の他作品から、私が勝手に春田作品に期待してるあれやこれやがあって、今回はその欲求が満たされなくて低評価にしました。まぐわい方も、まっとうで、健全な合体アングルばかりで、それはそれでもちろんいいんだけど、微妙に色気がなくて物足りない。でも、春田先生にはやっぱり、何かを期待してしまう。きっと、まだ何かあるはず。次の作品をまた楽しみに待ちます。(シーモア限定描き下ろし漫画は1頁のみ。)