このレビューはネタバレを含みます▼
猛暑厳しき折、背筋が凍る物語を求めて出逢いました。
怪談やジャパニーズホラーが好きなので、食指がウズウズと動きました。表紙からも恐ろしさが漂ってきます。お人形と目を合わすことも躊躇われます。
『バンシー』『グール』と共に三作収録されておりますが、一作目の『わたしの人形は良い人形』がトラウマとなりそうな恐怖で心に堪えました。
もはや因縁物と化してしまった市松人形が台風の目となるような災いをもたらし、逃げ場の無い恐怖で身の毛がよだちました。最後に含みを持たせた終わり方で、その後が「どういう顛末だったのかな」と妄想力を掻き立てられます。
もし疎開先からお人形の最初の所有者である女性の元に
お人形が戻ってこなかったとしたら?
2番目に所有者となった少女の祖母が欲を出さずに少女と共に供養していたとしたら?等々、いくつもの「もしあの時」が思い浮かんでしまいます。不運な「もしあの時」が重なり、最も恐ろしいのは人間の欲深さであるということに気がつかされました。
山岸凉子先生のホラー作品をもう少し読みたいと思う程の後を引く面白さでした。
市松人形と少女の組み合わせで遠い昔の記憶を呼び起こされました。子供の頃に『なおみ』という写真絵本を好んで何度も読み返したことがあります。その当時は怖いという気持ちではなく、少女と市松人形である「なおみ」の友情(?)を楽しんでいたように記憶しているのですが、今思い返すと奥深さが詰まった内容で、本作品を手に取るきっかけだったのかもしれないと考えると感慨深いです。